今回は、私が建築デザイナーとしてどんな仕事をしているのか、普段あまり詳しく話していなかったこともあるので、少し丁寧に書いてみようと思います。
(実は、以前からwantedlyでも仕事に関するブログ記事を書いていました。
こちらもぜひ読んでみてください)
「インテリアデザイナー」と「建築デザイナー」、この二つの肩書きを並べると、「どう違うんですか?」とよく聞かれます。簡単に言えば、インテリアデザインが「室内の空間づくり」を専門とするのに対して、建築デザインは「建物そのものの設計」に関わる仕事です。私は両方を手がけていますが、この二つは切り離せないものだと思っています。外観と内装が別々の思想でつくられた建物は、どこかちぐはぐになる。建物の外から中へ、一貫した設計思想が流れているかどうかが、空間の完成度を左右すると考えているからです。
建築デザイナーとしての仕事
建築デザイナーとしての仕事は、大きく分けると「新築設計」「リノベーション設計」「店舗・商業施設の設計」の三つになります。それぞれで求められるスキルも、クライアントとの関わり方も、かなり異なります。
新築設計
新築設計では、土地の形状や周辺環境の読み取りから始まります。どちらに開口部を設けるか、光をどこから取り込むか、隣地との関係をどう処理するか——建物が建つ前から、その土地のポテンシャルを引き出す作業が続きます。
クライアントとのヒアリングは何度も重ね、家族の人数や生活リズム、将来の変化まで想定したうえで設計に入ります。図面を描き、模型をつくり、3Dでシミュレーションし、また修正する。この反復のプロセスに、建築設計の本質があると私は思っています。
リノベーション設計
リノベーション設計は、新築とは全く違う難しさがあります。既存の建物の構造を読み解き、「変えられるもの」と「変えてはいけないもの」を見極める。古い建物ほど、解体してみて初めてわかることが多い。想定外の構造が出てきたとき、その場で素早く判断して設計を修正する柔軟性が求められます。でも同時に、古い建物には新築では出せない「時間の重み」があって、それをうまく活かせたときの空間には、独特の豊かさが生まれます。古民家や昭和の住宅のリノベーションは、その意味でとても好きな仕事の一つです。
建築を通じて何を伝えたいのか
リノベーションで私が最も大切にしているのは残すものを決める作業です。全部新しくするのではなく、その建物が持つ記憶や素材を意図的に残すことで、空間に語れる過去が生まれます。
店舗・商業施設の設計は、住宅設計とまた異なる視点が必要です。そこに来るお客さんの導線、滞在時間、ブランドのイメージをどう空間で表現するか。住宅が住む人のための空間なら、商業施設は来る人のための空間です。
オーナーやブランドの世界観を深く理解したうえで、それを建築・インテリアの言語に翻訳していく作業は、一種のクリエイティブディレクションに近い感覚があります。カフェ、セレクトショップ、ギャラリー、クリニック——業種によってアプローチはまったく異なりますが、「その場所に来た人が、何を感じてほしいか」という問いから設計を始める点は、すべてに共通しています。
現場監理
建築デザイナーの仕事で、一般的にあまり知られていないのが現場監理です。設計図を描いて終わりではなく、実際に施工が始まってからも現場に足を運び、図面通りに進んでいるかを確認し、職人さんや施工会社との調整を続けます。図面は意図の言語であって、それを空間に翻訳するのは職人さんたちです。その翻訳が正確に行われているか、あるいはより良い方向に修正できる余地がないかを見極めるのも、設計者の重要な役割です。
現場に立つたびに思うのは、建築はチームでつくるものだということ。構造設計、電気設備、設備設計、そして大工や左官や塗装の職人さんたち——それぞれの専門家が連携して、はじめて一つの建物が完成します。
設計者はその全体を俯瞰しながら、一つの方向にまとめていく役割を担っています。建築学科で学んだことの中で、この「全体を見る目」は最も実務で活きていると感じます。
10年後も好きでいられる建物
最後に、私が建築デザイナーとして一貫して大切にしていることをお伝えして締めくくりにします。それは10年後も好きでいられる建物をつくる」ということです。流行のデザインは移り変わる。
でも、構造的に誠実で、素材の選択が丁寧で、住む人や使う人の生活に本当に寄り添った建物は、時間が経つほどに価値を増していきます。建築は、できあがった瞬間が完成ではなく、そこで人が暮らしたり働いたりすることで、はじめて完成に近づいていくものだと私は思っています。だから、竣工してからも関わり続けられるクライアントとの関係を、私はとても大切にしています。


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